モトヤフォントの導入事例 お客様の声
『株式会社寺岡精工』
株式会社寺岡精工様(以下「寺岡精工」)は、電子はかりや自動計量包装値付機、POSレジシステムなど、流通小売、サービス・飲食、フードインダストリー、ロジスティクスという4つの分野に幅広い商品を提供する企業です。2013年、主力製品の自動計量包装値付機のリニューアルに合わせてモトヤのユニバーサルデザインフォント(以下UDフォント)が導入されました。その理由や、導入効果、そして現在の状況などについて伺いました。
寺岡精工がモトヤのフォントを導入した歴史は、2008年に遡ります。最初に導入されたのが、POSレジシステムの画面表示用に採用されたTrueTypeフォント(通常書体:マルベリ)です。当時、POSレジシステムのユーザーインターフェイスはビットマップフォントが主流でしたが、画面解像度などのスペックも向上しつつありました。この流れに沿ってアウトラインフォントを「組込みフォント」として検証すると、フレキシビリティが高くユーザーメリットも高いことがわかりました。そこで、予算やデザイン、カスタマイズ性の高さを勘案した結果、モトヤの書体を選ぶことが決定しました。このときに重視されたのが、レガシー機器との互換性や組入れやすさで、導入過程におけるモトヤのサポート力や開発力は、心強い味方だったと言います。 さらに2013年、自動計量包装値付機「AW-5600LL」を皮切りに、サーマルラベルプリンターやPOSレジシステムなどにUDフォントが採用されました。決定に際して、中心的な役割を果たされたのが、同社クリエイティブデザインシニアアーキテクトである横野周作氏です。横野氏はプロダクトデザインの専門家ですが、ご自分でフォントのことも色々と調べられ、社内での提案を行った際もUDフォントと従来フォントを使用した比較資料を作成されました。
UDフォント搭載第1号機となった自動計量包装値付機「AW-5600」。 店舗バックヤードで商品を計量してラベルを印刷できる値付機で、文字の見やすさ、値段の判別のしやすさなどを考慮し、UDフォントが採用されました。
「ちょうどAW-5600LLの開発段階だった2011年~2012年当時、流通業界ではUDフォントが店頭POPや案内板などに取り入れられるようになっていました。“公共性の高い場所はユニバーサルデザインに変わっていく”という空気が感じられたことから、AW-5600LLに取り入れてはどうか、と社内で提案したのです。自動計量包装値付機は、日本で初めて弊社が販売した製品ということもあって、メーカーとして強いこだわりがあります。業界の流れとしてユニバーサルデザインがあるなら、他社に先駆けて取り入れたいという考えがありました」(横野氏)
寺岡精工が導入したフォントには、導入時にさまざまなカスタマイズが施されており、「TSフォント(寺岡精工専用フォントの略)」という名称で呼ばれています。このTSフォントの特長は、旧機種で使われてきた寺岡精工製文字コードに合わせてあること、国内外の物流や小売販売などの計量法規(国内なら「計量法」、海外では「OIML」が標準)に則って重量関連の記号は字形を使い分けていること、ユーロマークの追加や「g」「鉤(かぎ)括弧」などの形状の変更、JIS X0213:2004字形への対応などが挙げられます。 「これらのカスタマイズは、モトヤに組込みフォントの導入を依頼した頃からずっと引き継いで行われています。このカスタマイズに早く応じてくれるところも、モトヤフォントを使い続けている理由の一つです。たとえば「g」という文字は、フォントによって字形が違いますね。また、海外で販売する製品は各国通貨記号も必要です。そういった我々の要望を伝えて、レガシー製品にも合う状態で納品してもらったのがTSフォントです。当然、これはUDフォントにも引き継がれています。」(横野氏)
UDフォントの導入に合わせてモトヤが行ったカスタマイズ内容の一部。 従来使われていた組込みフォントのデザインに合わせて「違和感のないように」というリクエストに対応しました。
そして最近スーパーやコンビニの店頭で目に付くのが、細かい文字でびっしりと印刷された商品情報。惣菜や弁当類といった調理済み食品はもちろん、生鮮食品も生産地や生産者など、記載される情報は日々増え続けています。ビットマップフォントで印刷していた時代であれば、こうした情報も読みにくいものになっていたでしょう。しかし、フォントがアウトライン化され、さらにUDフォントを採用した今では、消費者への情報伝達力が大きく向上しているそうです。 では、明朝、ゴシック(シーダ)、丸ゴシック(マルベリ)という3書体を選んだ理由はどうでしょうか。これは、“商品の特長に合わせて選択できるように”という狙いがあります。 「たとえば、少し値段が張る商品にはモトヤ明朝を使って頂き、お子様向けの商品にはモトヤマルベリを使って頂く。もともとフォントがもっているイメージを効果的に使って店頭を彩って欲しいと考えました。今では営業スタッフがフォントイメージの用例をもとに営業資料を作り、『フォントの使い分けで商品イメージを的確に伝える方法』を紹介しています。UDフォントを搭載しているから、という理由で弊社製品を選んで頂くことも多いようなので、導入効果は高かったですね」(横野氏)
UDフォント搭載前後のラベルを見比べてみると、その効果は一目瞭然。以前より文字の視認性が増し、見た目のスッキリさが際立っています。ラベルで重要なポジションを占める数字の判読性向上のほか、UDフォントの特長(文字のふところやアキが大きい)が最大限に活用され、大変読みやすくなったと評価していただきました。
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モトヤのUDフォントを使って作成された参考資料。現在では同様の営業資料を元に、UD明朝、UD角ゴシック(シーダ)、UD丸ゴシック(マルベリ)というフォントのイメージに合わせ、商品の魅力が伝えられるような使い分けを提案されているそうです。
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今では自動計量包装値付機やラベルプリンターの搭載フォントとして、UDフォントが採用されることは珍しくありません。寺岡精工がUDフォントを導入し、ライバル企業がそれに追随した結果、いまやUDフォントはラベルや値付用フォントのスタンダードになりつつあります。 次の展開を横野氏に伺うと、「美しさでしょうか」という答えが返ってきました。 「個人的には、ユニバーサルデザインは読みやすさを追求し、デザイン性は少し置いて行かれているような気がするので、その両立が課題だと考えています。そして、国内におけるUDフォントの実績が伝わったことで、海外チームから日本向けのようなUDフォントを使いたいという声も増えてきました。しかし海外(とくに欧米)の場合、フォントに対しては日本より情緒的に判断します。端的に言えば、読みやすさよりデザイン性の高さを重視するので、このバランスをどうするかは考えなければなりません。また、現在では、スーパーの店頭には電子値札が導入され始めているので、これも新しい媒体としての見せ方を先駆けて考えていきたいですね。」(横野氏)
AW-5600LLに採用されたUDフォントは、導入先での評判も上々。エンドユーザーから読みやすいとの声も聞かれ、UDフォントの持つ高い視認性や判読性が存分に発揮されているそうです。 横野氏は、「業務用製品は導入先でのミスを起こさないよう操作性と導線を考え、ユーザビリティを徹底的に追求してフォントも選んでいく。」と語ります。こうして選ばれたモトヤのUDフォントは、私たちの身近な場所でその存在を示しているというわけです。
「AW-5600」を筆頭に、ラベリングシステムやロジスティック部門のインジケーターなどに搭載されるUDフォント。現場の混乱がないように従来フォントも搭載されているそうですが、「導入企業のほとんどがUDフォントに切り替えて使われています」と横野氏。POSレジ機の画面表示にもUDフォントが使用され、エンドユーザー様にも「以前より見やすくなった」と評価されているそうです。
株式会社寺岡精工
クリエイティブデザイン シニアアーキテクト
横野周作氏