モトヤフォントの導入事例 お客様の声
「Mapion」(マピオン)
株式会社ONE COMPATH様(2019年4月1日に社名変更、以下「ONE COMPATH」)が
運営する日本最大級のインターネット地図情報検索サイト。地図を中心に天気予報や
乗り換え経路ナビゲーション、 路線図案内など多彩なサービスが提供されています。
ONE COMPATHが提供する地図検索サービス『マピオン』では、2009年4月に行われたサイトの大幅リニューアルに合わせ、モトヤの「モトヤEXシーダ」、「モトヤEXマルベリ」、「モトヤEXアポロ」、「モトヤEX明朝」を導入されました。このとき、ONE COMPATH(当時:株式会社マピオン)が目標にされていたのは「紙の地図に似た使い勝手をもつデザイン」だったそうです。そこでONE COMPATHに、モトヤフォントの印象や、先頃アップデートされたUDフォント採用の理由などを伺いました。
紙の地図は、長い歴史の中で読み手のことを考えたデザインが進化してきました。慣れ親しんだ書籍地図の質感をいかにWeb上で再現するか、そのためにどんなフォントを選べばよいかと社内で検討されたそうです。
「様々なフォントベンダーを比較検討した結果、最も紙地図に近い表現が可能で、なじみ深いものとして選んだのがモトヤのフォントでした。選ぶ基準はデザインが見やすい、読みやすいフォントであること。2009年の地図リニューアルは、約8年ぶりに行った大がかりなものでしたが、フォントについてもユーザーから好意的に受け入れられていると感じています。文字の美しさと可読性を兼ね備えたモトヤのフォントは、我々の目標に適う書体でした」(石井意子さん)
2009年のリニューアルでは、ユーザーが地図を開いたときに素早く目的地を見つけられるように駅やランドマーク、地区町村名などによって使用フォントを変更するなど、地図内で重要度が視覚的に認識できるような工夫が加えられました。この改訂は随時行われており、最近では役所や学校、病院に対しても一目で識別できるフォントが選定されています。
「マピオンの地図は最小縮尺が1/1500になりますが、この縮尺には地元の人しか知らないような小さな店舗の名称まで書き込まれています。情報が密集した地域をひとつのフォントだけで表示すると、情報の重要度が瞬時に選別できなくなるんです。そこで、駅名、公的施設、ランドマーク、交差点といった地図上の目印を何段階かのレベルに分け、書体を使い分けるようにしました。モトヤフォントはかなり小さな文字でも潰れずに表示されるので助かっています」
1/8000の縮尺で表示 1/8000で地図を表示すると、交差点名や市区町村名がまず目に入ります。続いて、学校や目立ったランドマーク的な建物が確認できるので、目的地の大まかな位置関係を把握することができます。
1/1500の縮尺で表示 1/1500になると歩行者にも分かるように各建物の名称まで記載されます。4種類のフォントが使用されていますが、デザインにメリハリが付けられているため、ユーザーが地図を見るときに分かりやすい導線が生まれています。
地図上の情報を表示するフォントとウェイトを模索する中で課題になったのが、表示の大きさと文字の太さでした。
マピオンをはじめとする多くの地図検索サービスでは、背景画像と文字をビットマップ(画像)化して表示するしくみが採用されています。
表示された文字情報は、実際にはフォントではなく画像として表示されているのです。そのため、ちょっとした文字の太さの違いが見た目に大きな影響を与えます。
「2009年以前のデザインでは、フォントファミリーの中でもウェイト3/5に近い太さを採用していました。リニューアル時にそのままマルベリ2やマルベリ3に置き換えてみたら、ちょっと細い、ちょっと太い、と感じる部分が出てきたんです。地図デザインでは縮尺に合わせて文字の大きさが変わります。縮尺によってはウェイトが太いと判読性が下がる例があって悩みどころだったのですが、モトヤさんに相談してみたら『マルベリ2と3の中間のウェイト〝マルベリ2B〟を用意しましょう』と解決策を提示していただき、迅速な対応で本当に助かりました。また、小さな文字で判別しづらい問題に対しては、大文字化対応フォントを制作していただきました。それにより、フォントに関しては2009年の段階で理想の状態まで詰められましたね」
2010年10月に行われたモトヤUD対応フォントへの転換は、これまでの実績もあって比較的スムーズな流れで行われました。元々モトヤに対して「読みやすく美しいフォントを作るメーカー」とご理解いただいていましたが、さらに石井さんは「画面が良い方向でシンプルになった」と評価されています。
「たとえば『新宿』の『宿』という漢字の下にある飛び出し(足)部分がなくなるだけで、情報が密集した場所の印象が変わることに驚きました。読みやすさに重点を置いてデザインされたUDフォントによって、以前よりすっきりとした画面になりましたね。もともと地図サービス事業者として、いつかはユニバーサルデザインに取り組まなければならないと考えていました。結果として1年足らずでのフォント変更にはなりましたが、素直にやって良かったな、と思っています。もうそれは、自然な成り行きだったんでしょうね(笑)。UDフォントへの切り替え時にも試行錯誤はありましたが、オーダーしたものに柔軟に対応してもらったので大きなトラブルにはなりませんでした。ユーザーの方からもユニバーサルデザインへの試みの新しさに対する評価をいただいています。UDフォントに変更することで、前バージョン以上に『見やすい、分かりやすい地図サービス』という我々が考える狙いはユーザーの皆さんに伝わったのではないでしょうか」
モトヤUDフォントの特徴 UDフォントには、太さの強弱をなくして極小文字にしたときの線切れをなくしたり、文字デザインから装飾を極力無くした構成への変更、大文字化を行うなど、さまざまな工夫が凝らされています。
地図デザインをプロデュースする石井さんに、「あったら良いなと思うフォントはありますか?」とお伺いすると、「どこまでフォントでできますか?」という質問が返ってきました。
「たとえば、地図上にあるピクトグラム(アイコン)は、弊社でデザインしたビットマップデータを使用していますが、ひとつのピクトグラムに対して縮尺ごとにバリエーションが必要になり膨大なデータ量になるんです。単純に縮尺が5段階あれば5種類のアイコンを用意しておかなければなりません。これがフォントになっていると、システム的には非常にラクになりますね。国土地理院の2万5千分の1地形図に使われている地図記号のフォントがあれば、白地図と組み合わせて学習用途のWebサービスが作れるかもしれません。それがモトヤが品質を保証した“美しく読みやすいフォント”として提供されていたら、とても便利だと思いますし、ぜひすぐに使ってみたいですね」
「マピオン」の地図に人気が集まる理由のひとつには、同様のサービスを展開する他のサイトに比べて掲載された情報が多いことがあります。だからこそ、重要な情報を一瞬で識別するためのフォント選びが重要になり、フォントに求められる役割が大きくなってくるわけです。「地図を見やすくするためのナビゲーション的な役割」が、フォントがもつ判読性や視認性に課せられています。さまざまな地図検索サービスがありますが、「フォント」に着目してみると意外な使われ方や見せ方があることが分かります。地図の活用方法のひとつとして、モトヤのフォントに注目されてみてはいかがでしょうか。
株式会社ONE COMPATH
メディアサービス本部
メディア事業部
サービス企画2G
ディレクター
石井 意子 氏